美しい建築を確かな技術力で実現します
600x400 2015gijyutu

コラム:建築技術/’15.7月

Post Series: コラム執筆・インタビュー

蒔いた種から芽吹くもの

ギャラリー間で行われた藤本壮介氏の展示を取材し、その時に感じたことをコラムにまとめました。

スペイン旅行から帰国してすぐに執筆したもので、’スペインの風にあたったのが良かったのかな。とても伸びやかで勢いのあるいい文章だ’と、編集長にお褒め頂き嬉しかったことを記憶しています。

未来への問いかけ

未来へ向けて変わりゆくパラメーターとして、「身体と空間」「外部と内部」「自然と人工」「個人と共同体」という4つが例として挙げられ、各プロジェクトはそれらに関連づけて紹介されている。

「自然と人工」にカテゴライズされるプロジェクトとして、青山で計画中のビルが紹介されていた。植物が成長していくかのように構造体がゆらぎ増殖し枝分かれしていくもの。というコンセプトだが、増殖した先が構造体として必要なもの、もしくは将来の増築に対応出来る部材として計画出来るならば面白いと感じた。同じ分類で、極めて軽い織物を緩く折り曲げただけのものに人形模型を添えた展示物もあった。ちょうど空調吹出口の正面に置かれ(わざと?)ドラフトを感じる風量にする事で、その展示物がゆっくり揺らぎ小さくなったり大きく膨らんだりしていた。建築が生き物のように呼吸する・・・将来、ナノファイバー技術が進めばそういうものが出来る可能性もありそうだ。

流れとかたち

フィリップ・ホール著の『流れ-自然が創り出す美しいパターン』には、普段目にする自然現象とその形について解説がされている。
私は、この本を以前から興味を持って読んでいるなかで思うのは、自然現象と形の関係を理解することは、究極の環境建築に近づくヒントになるという事。例えば砂丘の形は風と砂との最適解が形となったものであるから、建築物と風環境との関係も同じように考えれば最も抵抗の少ない形状となる。一方で人の動きは目的を与えると、全体数に対する予測可能な人数比率が高くなる。一人一人の点としての動きが連なり線となり、最も合理的な線の束が形となる。難しいのはその形が強いられたものだと人が感じると、心地良さからは遠ざかるという事だ。動きと形がフィットしていて心地良いと感じられるのかというのが最も考えなくてはいけないことだろう。(略)

未来の建築あるいは建築家の役割

建築技術がある成熟したレベルに達した現在、それらの技術をある程度だれもが享受しつつ、人が原初的に心地良く感じるゆたかな空間や、あったら良いなと思う空間を提案し実現していくことが未来の建築のあり方であり建築家の役割だと私は考えている。

アスリートが「継続は力なり」と言う言葉を見ると勇気づけられるのは、それが難しい事だと分かっているからこそ。日常の試みを積み重ね、流れを生み出していく事は私にとっても目指すべきところである。